こんにちは。ハルです。
今回は『仲介手数料無料の0円業者』について解説します。
最近、インターネットで『仲介手数料無料』と広告する仲介会社をよく目にするようになりました。
このように不思議に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、
- 仲介手数料が無料にできる仕組み
- 0円業者のメリット・デメリット
- 0円業者を利用して良いケースと悪いケース
- 0円業者だけの家探しはダメな理由
これらの内容について『ざっくり』と解説しています。
住宅購入の基礎知識として、ぜひ参考にされてください。
目次
なぜ仲介手数料無料にできる?
まずは、仲介手数料を無料にできる仕組みについて理解しましょう。
両手仲介と片手仲介
仲介会社が介在する不動産取引には、片手仲介と両手仲介の2つがあります。
- 片手仲介:売主と買主にそれぞれ別々の仲介会社が介在する取引
- 両手仲介:売主と買主の仲介会社が同じ(一社単独仲介)
3社以上が介在する『あんこ仲介』と呼ばれるケースもあります。ただし、一般的な取引ではほとんど関係がありません。
片手仲介と両手仲介では、両手仲介の方が難易度が高いと言えます。
売主は高く売りたいですし、買主は安く買いたいので、仲介会社は利益相反する関係の間に入り、契約が成立するように調整を図らなければなりません。
その代わり、両手仲介は売主・買主の両方から仲介報酬が入るため、収入は片手仲介の2倍になります。
仲介手数料無料は両手仲介に限られる
仲介手数料無料の仲介会社のことを、俗に『0円業者』と呼びます。
この0円業者が仲介手数料を無料にできるのは両手仲介の場合に限られます。
なぜなら、両手仲介であれば、買主の手数料を無料にしても売主から手数料を得ることができるからです。
仲介報酬は成功報酬であり、契約が成立しなければ仲介会社の身入りはゼロです。
本来、両手仲介は片手仲介の2倍の収入を得ることができますが、買主の手数料を切ってでも成約を獲得することの方が仲介会社にとって優先度が高いのです。
特に購入顧客の仲介をメインとする仲介会社はライバルが多く、どうしてもコスト面での競争になりがちです。
そのため、近年は『0円業者』がどんどんと増加する傾向にあります。
0円業者が狙う両手仲介の物件とは?
本来、両手仲介が成立するのは
売主から売却物件として預かった物件を、自社の購入顧客が買ってくれる
この様なケースです。
しかし、0円業者は購入顧客をメインに営業活動をしているため、売主から物件を預かることは滅多にありません。
そこで、0円業者は以下の物件を狙います。
- パワービルダー系の新築建売戸建て
- リノベ再販の中古マンション
パワービルダー系の新築建売戸建て
パワービルダーとは、ローコスト住宅を大量に供給する建設会社です。
具体的には、飯田産業やアーネストワン、一建設などの建設会社です。
ちなみに上記の会社は全て同じ資本です。
大量に住宅を供給するので『パワービルダー』と呼ばれています。
そして、パワービルダー系の新築建売戸建てに客付け(購入顧客を紹介)すると、仲介会社は買主だけではなく売主であるパワービルダーからも仲介手数料を得ることができます。
例外的にパワービルダー側に専任仲介会社がいるケースがあります。この場合は客付けしても片手仲介になります。
リノベ再販の中古マンション
もう一つは、リノベ再販の中古マンションです。
リノベ再販とは、不動産会社が中古マンションを買取り、リノベーション(もしくはリフォーム)をした後に再度販売する事業です。
これもパワービルダー系の新築建売戸建て同様、客付けをすると基本的に両手仲介となります。
0円業者のメリット・デメリット
0円業者のメリット
メリットはなんと言っても仲介手数料が無料であることです。
仲介手数料は、概ね物件価格×3%+6万円(+消費税)です。
仮に5,000万円の物件を購入する場合、約172万円(税込)が仲介手数料として別途費用が発生します。
しかし、0円業者に依頼すれば、この172万円が無料になるので、購入者としては経済的メリットが非常に大きいのです。
0円業者のデメリット
0円業者には以下のデメリットが考えられます。
- ビルダー or 再販中古マンションしか紹介してくれない
- 仲介担当者が素人の可能性がある
- しつこい営業をしてくる可能性がある
ビルダーor再販中古マンションしか紹介してくれない
先述したように、仲介手数料を無料にするためには両手仲介であることが必須です。
そのため、購入顧客をメインに営業活動する0円業者の場合、顧客に紹介できるのは両手仲介が狙えるパワービルダー系の新築戸建て、もしくはリノベ再販の中古マンションに限られます。
いくら業者売主以外の物件を探してほしいと依頼しても、紹介してもらうことはありません。
仲介会社(担当者)が素人の可能性がある
不動産仲介業は、宅地建物取引業者の免許さえ持っていれば開業することができます。
参入障壁が低いため、特に修業もしないまま宅建取得後すぐに開業される方も多いのが実情です。
このような仲介会社は実務を経験していないため、不動産に関してはほとんど素人です。
そして、開業直後は集客ができないため、仲介手数料を無料にすることで顧客獲得を図ります。
素人の仲介会社にとって都合が良いのは、これまで紹介した様なビルダー新築戸建てや再販中古マンションに客付けした場合、契約書や重要事項説明書は売主業者が作成してくれるため、仲介会社として不動産の知識がなくても、取引自体は成立できてしまうことです。
どうですかこの解放感!とってもお買い得ですよ!!
仲介会社としては、物件をご案内してお客様が「買う」と言ってくれればそれでお役御免です。
そうすると、仲介会社は物件の良い面ばかりを説明します。
そのうえ、不動産知識が浅いために物件が持つ固有のリスクを把握していないことも多く、契約した後に「言った言わない」のトラブルが発生することは珍しくありません。
ちなみに、『ダメな不動産仲介営業マンの特徴』については、下の記事で解説しています。
しつこい営業をしてくる可能性がある
0円業者は購入顧客メインに営業活動を行っている会社が多く、またビジネスモデルとしては『薄利多売』が原則です。
会社の至上命題が『売りまくること』になれば、必然的に営業スタイルはゴリゴリになります。
会社によっては、電話・メール・訪問問わずしつこい営業をしてくる可能性については注意が必要です。
仲介会社を通さずに買える可能性もある
参考までに、そもそも業者売主の物件は仲介会社を通さずに購入できる可能性もあります。
売主業者は宅建業者ですので、本来は自社で直接顧客に販売することが可能です。
では、なぜ仲介会社に販売を依頼しているかというと、主に2つの理由が考えれます。
- 販売の手間を省きたいから
- 仲介会社との約束になっているから
販売の手間を省きたいから
ビルダーや再販業者のビジネスモデルはとにかく『回転型』です。
とにかく仕入れて、とにかく売りまくります。
大量の土地や中古マンションを確保するためには、社員を仕入れに集中させる必要があります。
そのため、仕入れ段階で販売時の仲介手数料を事業収支に見込んでおき、集客については外部の仲介会社に頼るという仕組みになっているのです。
仲介会社との約束になっているから
ビルダーや再販業者が物件を仕入れる際にも、ほとんどに取引に仲介会社が介在しています。
そして、仲介会社はビルダーや再販業者に情報を提供する際、
もし仕入れに成功したら、再販する時はうちの会社に販売させてね!
このような条件を付けることが多いです。
条件は物件によりさまざまですが、概ね販売開始から3ヶ月を経過するまでは、仕入れに協力した会社を専属の仲介会社にすることが一般です。
まずは直接問い合わせてみる
業者売主の物件が気に入った場合、直接売主に問い合わせてみると良いでしょう。
業者のWEBページで普通に売っていることもありますので、まずはチェックしてみてください。
WEBページに掲載されていなくても、仲介会社との取り決めが特段無い場合は、直接対応してくれる可能性もあります。
ただし、注意すべきは既に仲介会社から物件案内を受けてしまった場合です。
既に特定の仲介会社が紹介してしまっている場合、直接取引してしまうと、その仲介会社との関係性に悪影響が出てしまう可能性もあるため、直接の顧客対応ができないケースがあるのです。
0円業者を利用して良いケースとは?
個人的には0円業者はメリットよりもデメリットの方が多いと考えていますが、以下のようなケースでは、0円業者を利用する価値は大きいと思います。
- 業者売主の物件が欲しい場合
- 0円業者の担当者が優秀な場合
業者売主の物件が欲しい場合
条件を広げずに、戸建てならパワービルダー系の新築戸建て、マンションならリノベ済みの中古マンションが良いと最初から決まっている方には、0円業者を利用することがオススメです。
0円業者の担当者が優秀な場合
不動産購入の成否は仲介会社(担当者)のレベルが大きく影響します。
そのため0円業者か否かに関わらず、本来は会社(担当者)の『質』で選ぶべきです。
最初から0円業者をメインに家探しをすることはオススメできませんが、結果的に0円業者の担当者が優秀であるならば、その方に頼って家探しをすることには価値があると思います。
仮に業者売主の物件(両手仲介)が希望に合わなければ、希望に合う物件を探してもらえば良いのです。
当然、その際には仲介手数料を支払う必要がありますが、後悔のない住宅購入が実現すれば、手数料を支払う価値は十分あると思います。
まとめ:0円業者メインの家探しはオススメしない
最も悪い言い方をすれば、0円業者のメリットは『安いだけ』です。
「不動産取引は情報の非対称性が強い」と言われるように、取引では不動産会社よりも一般の買主の方が情報量的に不利な立場にあります。
「安かろう悪かろう」とまでは言いませんが、安きに流れずに、仲介会社を選ぶ際には「コスト」よりも「質」を重視して選ぶことが重要です。
下の記事では『信用できる不動産仲介営業マンの特徴』をまとめていますので、こちらも是非参考にしてください。
以上、皆様のお役に立てれば幸いです。他の記事も是非ご覧になってください。
仲介会社の唯一の収益源なのに大丈夫なの?